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受賞作品制作過程

目次

応募作品コンセプトの発案

今回のコンテストに応募するに際し、まずは審査において期待されているであろう作品の想定をしました。
重点ポイントを以下の点に絞りこみアイデアを出していきました。

1.フォトコンテストでの審査
今回のコンテストではフォトコンテストでの審査となるので、写真映えするガラス色・テクスチャー、撮影場所のイメージまで想定すること。
 撮影場所を草木のある自然環境下で自然光をバックにしたいことで → パネルとする

2.主宰者部門での応募
デザイン面は従来のステンドグラスデザインにないような斬新なものであること。技術面では主宰者にふさわしい高い技術レベルが必要とされる作品であること。
技術面でのチャレンジとして → 3mm鉛線の組込み技法とし、随所4mmと5mm鉛線をセレクトして表現する 

3.ガラスメーカーとのタイアップ
コンテストではヤカゲニー社とランバーツ社とのタイアップがされていたようなので、いずれかのガラスメーカーをメインに使用した作品プランを出すこと。

作品のデザイン素案

Tohtoステンドグラス工房・教室のデザインアドバイザーである恩田采瑛子氏(スタッフプロフィール参照)とアイデアを出し合い、応募コンセプトに基づいて考慮した結果、デザインコンセプトを ”モダンポップ” ”非日常的な夢の中のイメージ” としました。

制作上の設計デザイン作成

ラフスケッチでデザインがイメージできたところで、具体的なパネルの制作デザインを決定していきます。
最近、当工房ではコンピュータで設計デザインを起案しております。頭の中のイメージと制作作業をイメージしながら時間をかけて作図していきます。今回は3、4、5mmの実寸線を作図に落として具体的な制作図を作図しております。

この段階で、設置現場がある場合は現場に制作図をはめ込んで出来上がりイメージを確認しますが、今回は自然環境下の写真撮影の想定でしたのでこのまま作業を継続しました。

ガラスの選定

自然光を通す想定で、透過性の高いキャセドラルのアンティークガラス、ドイツにある手吹きアンティークグラスのメーカーであるランバーツ社のガラスを、なかでも "モダンポップ" なデザインにあうガラスを選定しました。
オブジェクトパーツには明るめものを、バックには暗めのものを。
特に今回、バックに選んだガラスは部分的に細い線の強い流れのある、個性的でバックとしては難しいガラスでした。流れにムラがでないようにカットするのに気配りが必要で、倍版のガラスを注文しました。

ガラスピースのカット

 

バックのガラスピースカット

"ガラスの選定" でも述べましたが、バックに選んだガラスは細い線状の強い流れのある個性的なものです。
バックとして使用するときにその流れが不自然にならないようにガラスのどの部分を採用するかをプランします。

プランが決定したら板ガラスにプランを仮にライン書きしてから、ピースの型紙によりガラスカットしていきます。

オブジェクトのガラスピースカット

今回の作品のオブジェクトは非現実ですが花のようなものをイメージしています。
花の中心から外側に流れが出るようにピースをカットをしていきます。

アンティークガラスの厚みの違い

写真は同じガラス板でカットした、ピースの部分による厚みの違いを比較したものです。アンティークガラスの場合、ご覧のように驚くほど厚みがガラスの部位により変わります。その分、ガラスをカットするときや鉛線に組込むときに厚みに応じた気配りが必要です。

鉛線の組込み

この作品ではガラスとガラスをすべてフラットの鉛線で組込んで、半田で接点を接着する、ヨーロッパ様式の鉛線組込み技法を採用しました。

設計した外寸を確定するため、デザインペーパーの上から枠木を採寸しながら打ち付けます。右利き手の私は基本的に、枠木の左下から右上に向かって順次鉛線を組み込んでいくこととなります。

鉛線部材は、多くの部位に3mm幅のものを使用したほか、廻り縁用で10mm幅のもの、花の一部に4mm、ツルの一部に5mm幅のものを使用してデザインの表現をしました。

技術面での課題

3mm鉛線の採用
ガラスピースとガラスピースを繋ぐ鉛線が3mm幅ということは、各ガラスピースに掛かる部分が1mm以下しかないことになります。デザイン型紙に合う正確なガラスカットと鉛線の加工の精度の高さが要求されます。

細かいデザイン
今回のデザインでは花の中央部分等、細かいガラスピースの集まりで、鉛線の加工が大変です。場合により、細かい部分はそのグループ毎に単独で鉛線組込みの仮加工をある程度の大きさにしてから全体に組み込むこともします。

半田付け

すべての鉛線組込みが完了したあと、接点を点付けで半田付けしていきます。

接点の周囲の鉛線を整えてから半田付けします。表面が完了後、つづけて裏面を同様に半田付けしていきます。

鉛線部材の融点と半田の融点との差があまりなく、コテ先の温度が高すぎると鉛線が溶けてしまいます。コテ先の温度管理に気を使います。以前はコントローラーで温度管理をしながらの作業でしたが、最近は温度設定のできるセラミックヒーターの半田コテを使用することで、随分と温度管理が楽になりました。

最後に補強のため枠回りの10mm鉛線に補強棒を組み込みました。今回は4mm角の真鍮角棒を使用しました。